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2021.10.06 2021.04.15

スリッページ発生の仕組み解説!許容スリップの設定で無駄な損失を防ごう【FXの基礎知識⑧】

この記事で学べること

  • FXの注文が通る「約定」と「約定しない」原因について
  • スリッページの仕組みと発生させない回避策
  • 許容スリップ/スリッページの概要と設定方法
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この記事のライター 山口 遼平

プロトレーダーに師事を仰ぐ兼業トレーダー。当サイトでは、プロの成功体験から得たノウハウを『FXで勝つための心得』として発信している。

前回のFXの基本⑦では、スプレッドというFXの手数料について解説しました。次はそのスプレッドに大きく影響を与えるスリッページです。

FXでは意図しない損失機会があり、それが本記事で解説する『スリッページ』です。

まずFXで取引をする上で覚えていただきたいことが「売買の注文は想定通りに通らないことがある」ということです。
「想定通り注文が通らないなんて詐欺じゃないか」と思った人もいるかと思います。確かにスリッページは不透明な要素であるのも事実です。

しかし、スリッページを回避する手段はあるので安心してください。その代表的な手段が『許容スリップ/スリッページ』です。

本記事では、許容スリップを中心としたスリッページ回避手段となぜ想定通りに注文されない仕組みを解説しています。

1. FXで使う専門用語「約定」を理解しよう

FXの基本⑧-1

さて、突然「約定」という聞き慣れない言葉が出てきて困惑した方もいるかもしれません。

難しい言葉に聞こえますが、意味は「取引の注文が通ること」とシンプルです。

この約定はスリッページ同様FXをはじめる前に理解しておかないと、損失を拡大させてしまう可能性がある重要な要素となります。

ここでその概要を理解しておきましょう。

1.1. 約定とは?概要と使い方

約定とは金融取引専門用語で「金融取引の買い及び売りの注文が成立すること」です。

FXも金融取引であるためこの用語を用いて「米ドル1万通貨の買い注文が約定した。」などと表現します。

一度約定してしまったら、その注文を取り消すことはできません。つまり、やり直しができませんのでご注意してください。

そして、もう一つ注意していただきたいのがFXの世界では約定しないこともあるです。

その点について次に解説します。

1.2. FXは約定されないことがある

FX初心者は「売買が成立するなんて当たり前なんじゃないの?」と思うかもしれません。

しかし、我々が生活している中でも、商品が売り切れて買えないことがあるように、FXでも買えない(約定できない)状況は起こり得るのです。

実はFXでも売り切れに近い状態になることがあります。それは注文が買いと売りのどちらかに偏る時です。

スプレッド記事で解説した通り、買い注文をするとFX会社は売り注文を探して相殺させています。 しかし、買いと売りのどちらかに注文が偏ると、反対の注文を見つけれらないため、相場が乱れるリスクとFX会社が負うリスクが発生します。それらのリスクを抑えるために意図的に約定を拒否することがあります。

この注文を拒否することを、FXでは約定拒否(リジェクト)と呼びます。

この他にも、FX会社のシステム遅延やトレーダーのネット環境遅延も約定拒否の原因になり得ます。そこについては次章のスリッページのところで解説します。

1.3. FX会社が広告で使う「約定率」

FX会社は、「うちの会社は注文がちゃんと成立している」ということをアピールするために、「約定率」という指標を公表しています。

その名と通り、注文が通る確率を表しているため、100%に近いほど信用度が高くなります。

ただし、約定率の算出方法は会社によってマチマチで、良い数字になるように条件を設けているところがあります。

前の記事でお話したスプレッド提示率同様、その指標を出す条件まで目を向けることが重要です。

約定の基本まとめ

・約定とは、金融取引の買い及び売りの注文が成立すること

・FXの世界では約定しない時がある。注文が買いと売りのどちらかに偏る時やシステム遅延などが原因

・約定率という指標を公表しているFX会社がある。算出方法は会社によって違うので条件まで確認することを推奨。

2. FXをするなら避けられない「スリッページ」の基本

FXの基本⑧-2

注文時にもう一つ気をつけなければならないのが「スリッページ」です。

こちらは、約定と違って注文は通るのですが、注文時の価格(為替レート)で約定しないことを指します。

「注文通り約定しないなんて、詐欺じゃないの?」と思ってしまう方もいるかと思います。
しかし、それには理由が存在し、その理由を理解して頂ければある程度仕方がないと感じるはずです。

それでは、スリッページの概要とその発生原因を解説します。

2.1. スリッページとは?FX業界用語『スベる』

スリッページとは、注文した時の価格と約定された時の価格に差異があることです。FXの業界用語では『スベる』とも言います。

「注文通りの価格で約定されないなんて詐欺だ」と思うかもしれません。しかし、残念ながらFXでは起こり得る問題なのです。

例えば、1米ドル = 100.00円の時に買い注文をします。しかし、注文結果は1米ドル = 100.20円で約定され、注文時より0.20円高くなっています。

これがスベる、スリッページです。

なぜ詐欺みたいなことになってしまうのでしょうか。次にその主たる原因を解説します。

2.2. スリッページが発生する原因

スリッページが発生する主な原因は以下の3つがあります

・需要と供給のバランス崩壊
・FX会社のシステム遅延
・トレーダーのネット環境遅延

約定拒否される条件とほぼ同じです。それぞれに共通するのはタイムラグです。

2.2.1. 需要と供給のバランス崩壊

スプレッドが広がる原理と同じで、買いと売りの需要と供給のバランスが保たれていればスリッページ及び約定する可能性は低いです。なぜなら、買い注文に対する売り注文がすぐに見つかるからです。

しかしバランスが崩れていると、対となる相手が見つからないためにタイムタグが発生し、その間に値動きがあれば価格にズレが生まれます。

この需要と供給のバランス崩壊するタイミングは、早朝などの市場参入者が少ない時間帯大規模なファンダメンタルズ要因が発生した場合です。

前者は参加者が少な過ぎて相手が見つからず、後者はファンダメンタルズ要因に触発され需要が片方に偏ってしまい相手が見つからないという事象が発生します。

2.2.2. FX会社のシステム遅延

トレーダーの注文が集中することで、FX会社のサーバに負荷がかかりシステム遅延が発生することもあります。

このシステム遅延は、ファンダメンタルズ要因の大規模イベントが勃発した時に起こりやすい事象です。

多くのトレーダーが一斉に動き出すことで、サーバーに負荷がかりタイムラグが発生し、スリッページを引き起こします。最終的にFX会社が危険と判断した場合は、約定拒否や取引そのものを一時停止させることもあります。

ファンダメンタルズによる急激な値動きは、うまくトレンドに乗れば美味しいです。しかし、うまく乗れなかった時の損失リスクの他に、注文が約定しないリスク、スリッページするリスクがあることも忘れないでください。

2.2.3. トレーダーのネット環境遅延

こちらはトレーダー側のネット環境による遅延です。

自宅のネット回線や携帯の電波が悪い時などあるかと思います。

その状況でFXの取引をしてしまうと、注文ボタンを押してから注文した端末からFX会社のサーバーに届くまでにタイムラグが発生する場合があります。

これもスリッページの原因になりえます。ネット環境が不安定な時は、スリッページのリスクは頭に入れておきましょう。

2.3. スリッページ実績を公開しているFX会社

スリッページは、トレーダーの損失の原因にもなりFX会社にとっては公開したくない情報です。
事実、ほとんどのFX会社はスリッページの情報を公開しておらず、出しても当たり障りのない情報までです。

しかし、SBI FXトレードは『有利スリッページ、不利スリッページの割合』を毎月、通貨ペア毎に公開しています。(下記参照)

SBIスリッページ実績

ここまで事細かにネガティブな情報を公開していFX会社は他には存在しません。
その点SBI FXトレードは透明性の高い会社と言えますね。

また、実際にどの程度のスリッページが発生しているのかを知る教材にもなります。
「こんなもんか」レベルで良いので一度見ておきましょう。

スリッページの基本まとめ

・スリッページとは、注文した時の価格と約定された時の価格に差異があること。

・スリッページが発生する3つの原因

1.需要と供給のバランス崩壊

2.FX会社のシステム遅延

3.トレーダーのネット環境遅延

・スリッページ実績を公開しているFX会社がある。

3. 効果的なスリッページ対策『許容スリップ』

スリッページはなるべく発生してほしくない事象です。
その点はFX会社も認識しているため、スリッページ予防策として『許容スリップ/許容スリッページ』という機能を多くの会社が導入しています。

この機能を使いこなすことができれば、スリッページによる不要な損失を回避することができるので是非覚えておきましょう。

それでは、『許容スリップ/許容スリッページ』について解説していきます。

3.1. 許容スリップ/スリッページとは?

許容スリップ/スリッページ(以後許容スリップ)とは、注文時に「これだけのスリッページなら許容できますよ」と事前に指定できる機能です。
ちなみに、この許容スリップは、全てのFX会社で導入している機能ではありませんのでご注意ください。

使い方は、注文時に許容できるスリッページをpips単位で設定するだけとシンプルです。詳しい設定方法は次で解説します。

許容スリップの注意点として、必ず設定通りに作動しないことがあることです。これは、為替の大暴落やシステム遅延などで約定が間に合わない場合に起こります。
稀なケースですが、許容スリップを過剰に信用するのは危険です。

スリッページは発生することの方が少ないですが、許容スリップは設定しておく方が安全です。
特に数pipsの違いで損益が大きく動く取引をする場合は必ず使うかどうか検討しましょう。

3.2. 許容スリップを設定方法

それでは実際の許容スリップ設定画面を見ていきましょう。以下が許容スリッページの設定例です。

「許容スリップ」という項目に許容できる任意の数値(pips)を入力して注文するだけです。(今回はFXブロードネット注文画面ですが、多くのFX会社でも同じような設定方法です)

ここで設定した許容スリップ以上のスリッページが発生した場合、注文は自動的にキャンセルとなります。
その注文自体がなかったことになるので例え利益が出ていてもキャンセルとなる点には注意です。

3.3. 許容スリップの使い分け

許容スリップは一見、トレーダーにとって良い機能ではあるのですが、勝っているトレードも許容スリップに引っかかると注文自体がキャンセルされてしまいます。

そのため、許容スリップは無闇に使わず下記の2通りに使い分けることをおすすめします。

許容スリップの2つの使い分け
・注文通りに約定したい場合:許容スリップを少なく
・為替が大きく動いている場合:許容スリップを大きく、または設定しない

前者は絶対に注文通りに約定したい場面です。スリッページを許容したくない場面です。

後者は為替が大きく動いている時など、大きな利幅を期待でき多少のスリッページを許容してでも約定させたい場面です。
これはせっかく大きな利幅になったのに、許容スリップを設定していたがために注文が通らない。なんてことにならないような設定です。

このように、許容スリップは無闇に使うと勝ちトレードを取りこぼすこともあるので、設定の際は注意が必要です。

とはいえ、トレーダーの損失を防ぐという意味ではとても有効な手段であるため、テクニックの一つとして使いこなせるようになりましょう。

4. その他のスリッページ回避手段

FXの基本⑧-3

許容スリップ意外にも下記の通りスリッページを回避できる手段があります。

スリッページの回避手段
・スリッページの発生しやすい時間のトレードを避ける
・スリッページ率やスリッページに関する情報を詳細に公開しているFX会社を選ぶ

これらは許容スリップほどの効果はないかもしれませんが、スリッページを極力避けたい人は検討してみてください。

それではそれぞれ解説していきます。

4.1. スリッページが発生しやすい時間のトレードを避ける

スリッページが発生する原因でお話しましたが、スリッページは需要と供給のバランスが崩れている時注文が殺到している時に起こりやすいでしたね。

この二つが発生しやすい時間は、早朝などの市場が停滞する時間帯大規模なファンダメンタルズ要因が発生した時とです。

早朝は、FXで最も市場が停滞する時間帯です。
FXは東京、ロンドン、ニューヨークの三大市場が開いている時間帯が最も活発になり、この3市場のどこも開いていない時間帯が日本の早朝となります。(取引時間帯についてはこちら

大規模なファンダメンタルズ要因は、一般人が「これはやばい」と思える世界的イベントが発生した時(アメリカ大統領の発言やテロ紛争など)です。

この二つの時間帯をさける理由は、売買が片方だけに偏り需要と供給のバランスが崩れる可能性が高いからです。
また、大規模イベント時は注文が殺到するため、FX会社のサーバ遅延の原因にもなります。

スリッページが発生しやすいこの二つの時間帯のトレードは諦めた方が賢明です。

4.2. スリッページ情報を公開しているFX会社を選ぶ

スリッページ情報は、法令で定められていないためFX会社に公開の義務はありません。そのため、公開しているFX会社は非常に少ないです。

FX会社からすればスリッページはネガティブな要素であるために、義務がなければ公開しないと判断するのも理解できます。

そこを逆手にとれば公開している会社は、公開していない会社よりは透明性のある会社であると解釈もできます。

先にも触れましたが、2021年現在『SBI FXトレード』は、各通貨ペアのスリッページ実績を詳細に公開しています。この透明性の高さはユーザー側からするととても安心できる要素ですね。

スリッページ回避策まとめ

・許容スリッページを設定する

・スリッページの発生しやすい時間を避ける

・スリッページ率やスリッページに関する情報を詳細に公開しているFX会社を選ぶ

5.  まとめ

FXの基本⑧-4
  • – FXでは注文が通らないことがあり、そのことを「約定」と呼ぶ 約定されないことを約定拒否と呼ぶ。需要と供給のバランス崩壊、注文殺到時に起こりやすく、FX会社がトレーダーの注文を抑制する手段の一つ。
  • – スリッページとは、注文時の価格と約定時の価格に差異が発生すること。発生する主な原因は以下の3つ。 ・需要と供給のバランスが崩れた時。
    ・注文が殺到し、FX会社のサーバーに負荷がかかっている時。
    ・トレーダー側のネット環境遅延。
  • – スリッページを回避する方法は三つ
  • 1.許容スリッページを設定する 一部FX会社は許容スリッページ機能がないので注意。
  • 2.スリッページの発生しやすい時間帯を避ける 特にファンダメンタル要因の大イベントが発生した時は、スリッページの原因となる需要と供給のバランスが崩れやすく、注文が殺到しやすい。
  • 3.スリッページ情報を詳細に公開しているFX会社を選ぶ 公開義務のない情報を公開している会社は、公開していない会社より透明性があると判断できる。情報がより詳細ならなお良し。

ここまでで、スプレッド、約定、スリッページの説明を通じて、買値と売値に差がある、注文が通らないことある、取引レートにはズレが生じることがあることを解説しました。
FXは単純に安く買って高く売る(その逆も)のシンプルな損益計算だけではないことを理解して頂ければ幸いです。

これにて、FXの基礎シリーズは完結です。ここまで学んだ知識があれば、FXの土台はできました。
次はFXの取り組み方について解説していきます。
なぜなら、せっかく知識を身につけてもFXとの向き合い方が間違っていると、その知識は無駄になってしまうからです。FXとの正しい向き合い方を理解して着実に成長していきましょう。

FXの基本シリーズは全8記事で構成されています。初めから読みたい方はこちらからご覧ください。

この記事のライター

山口 遼平の写真

山口 遼平

プロトレーダーに師事。その成功までの努力と労力の多さを知り『FXは楽して勝てない』ことを痛感。 当サイトでは、FXで勝つための心得を発信している。努力をすればFXで必ず勝てる。

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